第2期生 1999年3月卒業



卒業生名

山口研究会第2期卒業生の諸君へ   3月17日

自筆署名

 卒業おめでとう。いよいよ4月から新しい生活が始まりますが、先ずは諸君の4年間に亘る学業の成果に敬意を表すると共に、心からなる祝意を呈します。今はまだ本当のところは判らないでしょうが、ここまでこられたのは間違いなくご両親のお陰です。この点はくれぐれも忘れないようにして欲しいと思います。
 さて、卒業に当たり先輩として一言いっておきます。
 まず第1に信用を築くのには10年かかるが、それを失うのは一日であると言うことを肝に銘じて下さい。学生時代は試験の時だけ勉強すれば何とかなったと思いますが、社会に出ると毎日が試験のようなものです。5年たち、10年経って漸く他人の信用を獲得することが出来ます。今後色々と苦しい場面があるでしょうが決してカッとなってはいけません。今まで築き上げてきた信用を一日で失います。
 第2は人に注意することは注意されるよりも気が重いものだということです。会社生活の中で先輩や上司からかなり耳の痛いことをいわれると思います。その時この言葉を思い出して下さい。相手の欠点をズバリとついて今後の改善を指導するのは上司にとって実にいやなことです。余程の愛情がなければ出来ません。
 第3は自分自身の意見を持つことです。これに固執してはいけませんが、意見のない人の主張は通りません。上司であっても自分の意見は遠慮なく、しかし丁寧な言葉で主張し、いれられなければ命令に潔く従って下さい。
 最後に時間厳守です。この点はゼミでもうるさく言いましたが、社会人になって遅刻は信用を失うもとです。必ず5分前には所定の場所にいて下さい。
 小生自身社会に出て苦しい場面が何度かありました。そのたびに福沢諭吉の学校を出てこんな事で負けてたまるかと勇気を奮い起こしました。そのもとは福翁自伝にあります。これだけは是非読んでから卒業して下さい。
 小生はゼミを通して一生懸命やりましたが、その心は諸君に慶應に学んで良かったと本気で思って貰いたいということにありました。その気持ちが通じたかどうかは分かりませんが、少なくとも清華大学とのインゼミを通して諸君が自分の潜在能力に目覚めたことと思います。諸君は本気でやれば必ず出来ます。
 それでは慶應の卒業生として胸を張って社会に巣立って下さい。社会人になった諸君と会うのを楽しみにしています。  

北京出張を翌日に控えた研究室にて


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