山口光恒研究会 卒業生の諸君へ

第5期生 2002年3月卒業



卒業生名

自筆署名

遅刻をするのは暇な人間である

 諸君卒業おめでとう。先ず諸君に言いたいことは、卒業は諸君一人の力で可能となったのではないと言うことを肝に銘じて欲しいと言うことです。とりわけこれまで20年以上に亘って諸君の成長を温かい目で見守ってこられた諸君のご両親或いは保護者の方の助力がなければ今日の諸君はなかったと言うことを片時も忘れないで下さい。卒業証書を真っ先に見せて安心させてあげて下さい。
 さて、4月からはいよいよ社会人ですが、敢然と新たな世界に飛び込み思い切って難局に挑戦して下さい。何もおそれることはありません。社会は諸君の若い力、新鮮な物の見方を必要としています。今日本経済は未曾有の難局に直面しています。単に金融不安であるとか雇用の流動性と言うことではなく、小生が最も心配しているのは日本人が自信を失っているのではないかと言うことです。諸君は清華大学との環境会議で感じたことと思いますが、中国を訪問する多くの人がそのエネルギーに圧倒されています。日本は既にかなり前から成熟社会になっていますが、その中で世界をリードするようなグランドデザインを提示してこそ世界から尊敬を受け、リーダーシップを発揮できます。
 諸君は単に企業で生き残るなどという小さい目標にとらわれることなく、今後日本はどうしていったら良いかという視点を常に持っていて欲しいと思います。同じ仕事をしていてもこういう目で常に考えている人と、単に目先の仕事に追われている人では10年経つと取り返しが付かない差が生じます。
 その上で、将来自分が本当に実行したいことを実施に移すには、社会から信頼され責任ある立場に立たねばなりません。その為に当然仕事もできなければなりませんが、ここで一つだけ誰にでも心がけ次第で実行可能な事があります。それは絶対に遅刻しないことです。会合に遅刻することは時間通りに集まっている他人の時間を無駄にしているという点を肝に銘じて下さい。これは他人の信頼を失う大きな原因になります。「遅刻をするのは暇な人間である」、卒業に当たってこの言葉を諸君に贈ります。
 小生は全力を挙げて諸君の成長に力を貸したつもりです。諸君、慶應の卒業生として胸を張って巣立っていって下さい。


2001年3月12日
北京から帰国の機中にて