山口光恒研究会 卒業生の諸君へ

第6期生 2003年3月卒業



卒業生名

自筆署名

仕事は真剣なゲームである

 諸君卒業おめでとう。4月からの新たな生活への期待で胸がふくらんでいることと思う。先ず諸君の肝に銘じて欲しいのは諸君は一人の力で卒業したのではないということである。これまで育んでくださったご両親或いは保護者の方々はじめ多くの人の目に見えない支えがあって初めてこの日を迎えたのである。 
 さて、卒業に当たって先輩として一言申し述べる。諸君の大部分は4月から仕事に就くであろう。以来長期間にわたって諸君は仕事を続けることと思うが、仕事は時に自分の意志で制御することが出来ると同時に、時にはそうでない場合もある。
 ここで諸君に特にいいたいのは、仕事には全力投球せよということである。諸君が選んだ仕事であるから、諸君は先ずそれを極めることを目指さねばならない。仕事は打ち込めば打ち込むほど面白くなるものである。また、企業の場合には少なくとも管理職にならない限り、本当に自分のやりたいことを組織の中で実現することは困難である。単に昇進したいということではなく、自分の考えを実現するために昇進に向け頑張って欲しい。
 このように諸君が仕事に真剣に取り組んでも、必ずしも思い通りになるとは限らない。むしろそうならない方が多いと思う。それにもめげずにチャレンジを続けることで新たな道が開けると思う。
 こうして十年、二十年と経つうちに仕事面で成功したかどうかが見えてくる時期が来る。そこで是非考えて欲しいことは、仕事に成功したからといって人生に成功したわけではないし、うまくいかなかったといって人生に敗北したわけではないということである。人間の価値は多様である。しかし30代から50代は仕事に夢中のあまり、仕事面での成功を人生の成功と勘違いし、失敗を人生の失敗と思いがちである。これは全く違う。
 では仕事は所詮仮の姿なので人生をエンジョイするために適当にやればよいのか。そうではない。仕事に真剣に取り組めないようでは人生に勝利を収めることは不可能である。それと同時に仕事は何十年にも亘るゲームなのである。うまくいく場合もあるしそうでない場合もある。ゲームに勝てば嬉しいがそれ以上ではない。負けた場合も残念ではあるが、それ以下ではない。人生の勝者になる道は十分残されている。
 上記から、諸君は仕事という長期にわたるゲームでは必ず勝ち抜くべく、真剣に取り組んで欲しい。その上でゲームの勝負とは別に、人生の勝者になるよう仕事以外の世界に日頃から目を向け、充実した人生を送って欲しい。
 「仕事は真剣なゲームである」。諸君の門出にあたり、この言葉を諸君に贈る。さあ、慶應義塾の卒業生として胸を張って社会に巣立っていって欲しい。


2003年3月19日